先輩移住者紹介~平井 茂さん・戸田千晴さん~

(はじけるような笑顔が印象的なお二人に
移住の経緯やながと暮らしのことなどお話を伺いました。)

「私たちにとってここは欲しいものがすべて詰まった玉手箱

平井 茂さん 40代  戸田 千晴さん 20代  神奈川県よりIターン
フリーカメラマン  フリージャーナリスト

移住のきっかけ・当時の思いを教えてください

(茂) 元々移住願望はありませんでしたが、パートナーに田舎暮らしの提案をされ、写真はどこでも撮れるし、移住するのも良いのではないかと思いました。新天地へ赴く不安もありましたが、それ以上に期待に胸が膨らみました。もっと地に足を着けて写真に取り組みたいという願望があったからです。

(千晴) 元々自然の近くで、田舎で暮らしたいと思っていました。首都圏で2~3年生活し、楽しい事や学びも多くありましたが、私には都会での生活が合いませんでした。便利な物で溢れる都会での暮らしの中で、「生きている感」や「人間味」をあまり感じませんでした。それに何より不便なことが多い中でもいきいきと生きる人たちを心からかっこいいと思っていました。

移住先はどのようにして探しましたか?

(茂・千晴) 移住計画は立てたもののどこに住もうか、これには正直頭を抱えました。そこで考えたのは、どこに住むかではなく、どんな暮らしをしたいかということでした。

お互いの希望を出し合い、譲れない条件をリストアップし、その条件に合いそうな自治体の移住関連サイトを片っ端から調べました。コロナ禍であり実際にその土地に足を運ぶことが出来なかったので、Googleマップ(航空写真)で、気になった地域を調べ、自治体に問い合わせました。希望条件に合う地域がなかなか見つからず、煮詰まっていた時に長門市定住支援サイトが目に留まりました。お互いがイメージする理想の暮らしに当てはまる部分が多く、胸が躍りました。

住まいはどのようにして見つけましたか?

(茂・千晴) 5月に長門市定住支援サイトで現在の家を見つけ、オンライン移住相談を行い、気になった物件の内覧予約をしました。7月に現地視察を行い、イメージ通り一目見て気に入ったので、すぐに大家さんに会いに行き契約を交わし、8月に引っ越しました。

▲自宅から見える夕焼け
▲希望条件の一つ 山が近くにある暮らし

移住してきて苦労した事・困ったことはありましたか?

(茂・千晴) 移住して、自然相手の暮らしがいかに大変なのかを痛感しました。着いたその日にアブに車を囲まれ、家の中ではムカデが大量発生と困ったことは多々ありましたが、何といっても畑作りに苦労しました。長い間放置されていた畑は、背丈ほどの雑草で覆われており、草を刈り、根を掘り起こしと、体がきしむ日々でした。そんな私たちを見かねて近所の方が農機具の使い方を教えにきてくれたこともありました。大変でしたが、見晴らしが良くなったとご近所さんが喜んでくれ、野菜の苗を持ってきてくれました。今では小さいながらも10種以上の野菜が育つにぎやかな畑になりました。苦労して開墾した畑で、種から育てた大根を裏山に住むサルに2本持っていかれたのは悔しかったですね(笑)。

あと、家が山に近いので湿気が多くカビが生えたりもします。定期的に押入れの換気をしたり、しまっているカバンを天日に干したりと対策を取っています。

▲無農薬で育てた立派な大根
▲カバンも一緒に日向ぼっこ

移住して良かったと感じるとき

(茂)実家が農家ということもあり、絶対に畑仕事はしたくないと思っていたのに、自主的に行う畑作業の楽しさに気づくことができました。種をまき、水をやり、無農薬で育てた野菜が食卓に並ぶ喜びはひとしおです。健康的な食生活になったことでおなかの調子も良くなりました(笑)。

(千晴)ご近所の方からお裾分けをいただいたり、そのお返しを考えることがこれまでの生活では無かったので楽しいです。移住して間もない頃、隣に住むおばあちゃんが、人参を持ってきてくれたのですが、買い物先で詰め放題が行われていて、そんなに買うつもりはなかったけど、私の顔が浮かび袋に沢山詰めて買ってきてくれたと聞いた時、本当に嬉しくて・・・出会ってまだ数週間なのに、私の為に野菜を選んでくれるなんて・・・そんな素敵なご近所さんに恵まれてとても幸せです。

▲二人で土と向き合う時間
▲ご近所さんから頂く里山の恵み

どういったお仕事をされていますか?

(茂) ドキュメンタリーフォトグラファーとして国内外で写真を撮影しています。移住してきてからは、地域の行事、伝統文化や自然を主に撮っています。引っ越しが落ち着いてから仕事を探していたところ、地域内にある牧場から人手が足りないので、手伝ってほしいと声をかけてもらい、小さい頃から興味のあった牧場でも働いています。

(千晴) 国内外の社会問題を中心にフリーランスで取材・撮影を行っています。併せて、自宅でチラシ作成などのデザイン関係の仕事をしています。デザインの仕事は移住を実現する為に、1年かけて1から勉強しました。田舎に移住するということは、首都圏と違いアルバイトするにしても、仕事がすぐに見つかるとも限らないし、職場まで距離がある事も覚悟しておかなければならないと思いました。現実的に考えて生活する為、生きていく為に必要最低限のお金は確保しなければならないと思い、在宅で可能な仕事のスキルを身につけました。

▲地域内の牧場では長州ながと和牛を飼育
▲作業に疲れた時は縁側に置いたハンモックで一休み

移住して生活コストの変化はありましたか?

(茂・千晴) 光熱費に関しては、都市ガスではなくプロパンガスということもあり、少し上がりました。食費に関しては物価が安いのはもちろんのこと、近所の方からお裾分けをいただいたり、家庭菜園を始めたことで、首都圏に住んでいた時よりも格段に安くなりました。私たちの場合、移住前は電車移動が主で、どこに行くにも結構な交通費がかかっていました。たまに車で出かけてリフレッシュしても帰りの渋滞で疲れてしまうこともありました。今は電車代よりもガソリン代の方が安く済んでいますし、密を気にしなくていいプライベート空間での移動はとても快適です。目的地に着くまでの道のり(景色を眺めながらのドライブ)も楽しいし、気になったところに気軽に立ち寄れます。その際も田舎は駐車場が広くて無料のところが多く、時間を気にせずゆっくりと買い物や観光を楽しめます。全体的な生活コストは下がり、幸福度数はグーンと上がりました(笑)。

地域側の受入体制はどうでしたか?

(茂・千晴) 移住をサポートしてくれた定住支援員、移住コーディネーターの方が最初から最後まで親身に相談に乗ってくださったので、安心して移住することができました。

家の前で作業をしていたら、かわるがわるご近所さんがきてくれて、草刈り機の使い方や、暮らしの知恵を教えてくださいます。近くにある幼稚園からイベントのお誘いを受けたりと、親切な方がとても多く、皆さんが温かく迎えてくださったことがとても嬉しかったです。

▲ハロウィンでお菓子を配る千晴さん(くまもん)

今後の取り組み・夢を教えてください

(茂・千晴) 日々の暮らしを丁寧に、敷地や裏山の整備など少しずつ開拓していきたいと思っています。また、地域の伝統行事や文化などを中長期的に密着して写真を撮りたいです。コロナが落ち着いたら国内外へ取材・撮影にも行きたいと思います。

▲地域内で受け継がれている滝坂神楽舞を撮影
▲自宅そばの砂防公園にて

移住を検討している方へのメッセージをお願いします

(茂・千晴) 私たちは縁もゆかりもない土地への移住で知らないことや経験したことのないことばかりでしたが、畑づくりから郷土料理の作り方、冬支度など多岐に渡る生活の知恵をご近所さんから教えていただきながら日々楽しく過ごしています。学ぶことが沢山です。

移住の計画段階では不安なことも多いと思いますが、一旦移住をしてみたら案外大した問題ではなかったりします。自分から地域の方やご近所さんに助けを求めてみることで新たな人間関係が広がったりして、どんどん生活しやすい環境にもなっていくのではないでしょうか。また、事前に気になることがあれば親身に相談に乗ってくれる移住コーディネーターや定住支援員の方々もいるので気軽に相談してみてください。自然が豊かで食べ物も美味しくて、とても良い場所ですよ。

私たちにとってここは欲しいものがすべて詰まった玉手箱のようです。今はまだそのふたをそっと開けて、少しだけ中をのぞいただけですが、これから時間をかけて大切な宝物を手に取りめでるように、潤いのある暮らしをしていけたらと思っています。

もし、今の環境、人間関係、仕事などから離れたいと思っている人がいたら是非田舎暮らしも検討してみてください。今の世の中では不便だと切り捨てられた大切なものを拾えるかもしれません。それにもしかしたら、思いのほか肌に合うかもしれませんよ。