しごと人インタビュー~林業~

(歌舞伎を彩る舞台衣装の仕事から林業に挑戦する為、家族と共に東京から長門市へ
Uターン 木材加工会社・森林組合を経て、独立した福永さんに
林業の魅力や仕事のやりがい、今後の目標などを伺いました)

「美しく健康な森を未来の子どもたちに残したい」

福ノ杜林業 代表 福永 篤史さん

林業をはじめたきっかけを教えてください

子どもが生まれるタイミングで自身のライフスタイルを見つめ直した時に、ふと目にとまったのが植物の世界でした。その時から自然というものに興味が湧き、自然の世界に目を向けるようになりました。そんなある日、妻の故郷である大阪で、神社の境内にそびえ立つ一本の巨木に出会いました。樹齢およそ千年を誇る雄大で美しいクスノキの佇まいは、一瞬で私の心を魅了し、そこから木に関わる仕事がしたいと考えるようになりました。「森林の仕事ガイダンス」に足を運び、林業の仕事や山口県の林業の状況などを聞き、数々の相談を重ね、地元である長門市で、製材・木材加工をメインに林業を行う会社「シンラテック」に就業することが決まりました。

▲森林の仕事ガイダンス
▲林業に必要な道具の展示もある

どうして林業で独立しようと思ったのですか?

前職を辞め、林業で生きていくと決めた時から独立する事を考えていました。今の林業は大植林時代(拡大造林)が終わり、保育林業(枝打ち、除伐)を経て、これから皆伐(木材生産のためすべて伐採する)の時代に入りました。しかし、「まだ50年程度の山林が成熟しているのか?木材生産以外の山林のあり方については?」と、今の林業のあり方に多くの疑問があり、問題があるように感じました。私は自然の必要性とともに、樹木や大地の豊かさ、美しさを伝え、後世に残していくことが林業の本質だと思っています。

独立するまでにどういった経験を積まれましたか?

はじめに、製材や木材加工業がメインで強みでもある「シンラテック」で木材利活用について学び、そこから林業の基本である生産の仕事に就くため「山口県西部森林組合」で林業の基本を勉強し、ノウハウを身につけました。さまざまな林業技術は、現場で働きながら身につける事ができました。国の「緑の雇用」事業(3年)に加え、山口県ではプラス4カ月のOJT(現場での実践を通じて技術を身につける育成方法)研修をサポートしてくれますので、そこで刈払機取扱作業者の安全衛生教育などをはじめ、12種類の機械の資格を取得しました。


※株式会社シンラテック会社情報はこちらから
※緑の雇用事業情報はこちらから

▲チェーンソーを使い木を切り倒す
▲切った木を麓まで運ぶ作業

一般的な林業の一日の仕事の流れを教えてください

8時ごろから山に入り、お昼休憩を60分取って、16時半には下山して17時に終業というのが基本的なスケジュールです。お昼休憩とは別に午前と午後、休憩を取ります。肉体労働なので、しっかりと休憩を取ることも大事になってきます。

林業の魅力・やりがいを教えてください

この仕事の魅力は、まず四季を強く感じられることです。例えば春には山桜が開花し広葉樹が芽吹き、夏は森林が青々とした緑に包まれます。秋になると紅葉が始まり森林は色鮮やかになり、冬は森林に落ち葉や雪が積もります。休憩中はそうした四季を感じながら、心地よく吹く風を感じ、鳥のさえずりが聞こえてきます。自然の中で働き、間伐などによって森に光がきらきらと差し込み、昨日まで薄暗かった山林が明るく生まれ変わる瞬間に立ち会える・・・つまり人の手が加わる事で森の環境を守っているのです。そうしたところにやりがいを感じています。

▲倒すタイミングを見計らう
▲静かな森に倒れる音が響く

林業を仕事にする上での心構えはありますか?

僕自身、体力には割と自信がありましたが、現場での仕事でまず直面したのが、「体力不足」です。就業当初は歩けなくなるほど体力を消耗し、疲労と不安の毎日でした。しかし、1年も経てば業務とともに山の環境にも慣れ、今では体力面での不安もなく仕事に取り組めるようになりました。林業の仕事は想像以上にハードなので、「しっかりとした覚悟」が必要だと思います。

▲軽快な身のこなしの福永さん
▲仲間との連携も大切

夢・今後の目標を教えてください

「100年、200年・・・と生長した木々が生い茂る荘厳な森・美しく健康な森を未来の子どもたちに残したい」というのが私の夢です。自然に生かされている事を忘れずに、森林の恵みを大切に、事業を通じて自然の魅力を肌で感じ、それを多くの人が体感できる場所を創出していきたいです。今後はその土台作りとして、子どもも大人も気軽に森に触れ、森を育む機会を作っていきたいと考えています。どういう林業をやっているのかを見てもらえる風景を作っていくことが、林業を支援することにも繋がるし、林業の魅力を高めることにもなると思っています。

▲夢は美しく健康な森を未来の子どもたちに残すこと
▲子どもも大人も気軽に森に触れる機会

どんな人が林業に向いていると思いますか?

わかりません(笑)。が、おおらかな人は向いていると思います。そして自分にとっての価値観や大切にしている軸みたいなものがある人は、これから林業で必要とされると思います。林業は、事業自体が50年以上の遠い先を考えて行われているので、方針が変わったから仕事のやり方を変えるという話には中々ならないし、そこに振り回されていたら、自分の孫に、胸を張って爺ちゃんの仕事の話できないです(笑)。

林業を検討している方にメッセージをお願いします

まず、体が資本です。最初は自然が気持ちいいなんて言う余裕がないくらい疲れます。ですが、体が慣れて仕事が手についてきたらいろいろなことがみえてきます。しかし、そこまでいけずに辞めてしまう方が多い印象があります。私個人としては、山口県の林業就業に対する地域アドバイザーをしています。まずは疑問や不安を無くす為、相談できる仲間を見つけ、いろいろな林業を知り、その中で自分の軸に合う林業を探してほしいと思います。

●会社概要/福ノ杜林業
●設立/2021年
●業種/林業
●住所/長門市仙崎626
●電話番号/090-6840-7395
●お問い合わせ/2021fukunomori@gmail.com