先輩移住者紹介~安心院淳さん~

(料理を通して繋がったご縁によって長門市へ導かれた安心院さん。料理に熱き情熱を注ぐ彼の次なる挑戦は!?)

「温泉街だけでなく長門市全体に食文化のBIG WAVEを!」

安心院 淳 (あじみ すなお)さん 50代 東京都からIターン
株式会社 大谷山荘 調理部 料理長

移住前はどのようなお仕事をされていましたか?

ずっと料理一筋です(笑)

地元(大分県)を離れてから、ますは福岡の飲食店に勤めていました。20代の頃は、とにかく東京に行きたい気持ちが強かったです。チャレンジしたいという気持ちに溢れていたのですが、ちょうどバブルがはじけたタイミングだったので、どこのお店も雇ってもらえませんでした。その後、関西に出てみたものの、関西は水が合いませんでした(苦笑)

たまたま同じ大分県出身の料理人と福岡で知り合い、同じ道を志すものとして同郷同士で盛り上がり親しくしていました。その彼から東京で一緒に働かないか?と声をかけられたのが、東京進出のきっかけとなりました。

東京では、銀座にあるレストラン型の大分県アンテナショップで2代目料理長を務めさせていただきました。そこの初代料理長が、福岡で知り合った同郷の彼でした。レストラン型のアンテナショップは、今でこそ色々な県がやっていますが、実は大分県が発祥なのです。

北海道や沖縄県というのは、認知度も高く魅力が多いため強いです。しかし、大分県はインパクトが弱かった…。「大分県に来てほしい!」という気持ちが強いため、実際にお客様にカウンターで料理を振る舞いながら、大分県の話をし、大分県の食材を使って、大分県の郷土料理を提供していました。ただ地元の味を100%再現するのではなく、銀座という土地で出せるものとしてアップグレードして提供し、大分県に興味をもってもらうことが僕の仕事でした。

( 前職に在職中に受けたインタビュー記事はこちら ※たびこふれHPより )

移住のきっかけは?

前職の勤続10年のタイミングで「辞めようかな?」と考えるようになりました。大分県の郷土料理を銀座という土地に合わせて提供するのが基本だったのですが、それ以外にもコース料理の中で、郷土料理から離れて趣向を凝らすこともあります。長く続けていると、自分自身の考えには限界が生まれ、同じような傾向になってしまいます。ある一定の壁を越えられなくなると、新たな視点での魅力発信ができなくなってしまうため、『料理長交代』という考えに至りました。

そのタイミングで銀座店のビルの建て替えが決まり、移転業務の中での料理長交代は、引継ぎをする新料理長にも酷だなと思い、2年延びてしまいました(笑)

湯布院の旅館の知人が、現職場の大谷山荘と繋がりをお持ちでした。湯布院が東京で観光PRをする際、必ず銀座の店舗を利用して下さっていたご縁もあり、辞職を会社に相談した際、大谷山荘での仕事を打診していただきました。

長門市以外の候補地はありましたか?

他にいくつか転職先の候補地はありましたが、足を運ぶまでには至りませんでした。

料理人として駆け出しだった頃、『大谷山荘』はよく雑誌に掲載されていて、頻繁に色々な場面で見かける度に、「すごい料理を出す旅館だな~」と記憶に残っていました。

初めて長門市視察の際は、職場を紹介してくださった湯布院の料理長と一緒に訪問しました。その時は職場の視察だけだったこともあり、2回目の訪問時に大谷山荘がある長門湯本以外に足を延ばし、海までの距離が近いことに驚きました。大谷山荘はすごい山の中にあるイメージで、自身の出身地も山の中だったので抵抗はなかったのですが、車で15分も走れば〝仙崎〟だよと教えてもらい嬉しくなりましたね。

第一印象としては、正直、何もない町だな…と思いました(笑)しかし、何もない町で交通の便もそんなに良くないのに、それでも宿泊のお客様がこれだけ来るだけの魅力があるのだろうと感じました。

移住支援制度で活用されたものはありましたか?

住まいに関しては、会社で探してもらうのと並行して、自身でも探しました。事前に市の空き家情報バンクについて定住支援員さんに相談もさせていただきましたが、検討期間が短いこと、希望する条件の賃貸物件も少なかったため、利用はしませんでした。しかし、地域の不動産情報を共有していただき、相談にのっていただきました。

現地を訪問する際、東京のやまぐち暮らし支援センターの方から「YY!ターン交通費補助金」を教えていただき、利用することが出来ました。移住前に現地を視察することは大切ですし、何度も訪問するとなると交通費も嵩むので、ありがたかったですね。

長門市に住んでみていかがですか?

とにかく野菜が美味しいですね。野菜が美味しいのは水が美味しいから。お米を炊くときも、水で味が変わります。本当に美味しいものが溢れています。

そして海がきれい!!!先日、元乃隅神社に行った際、高所恐怖症なので、勇気を振り絞って先端までいったのですが(笑)とてつもなく綺麗で感動しました!千畳敷にも行き、広々とした芝の上で寝ころび大自然を堪能しました。釣りにも行ったのですが、釣れたのはベラばかりだったので・・・これから練習が必要ですね(笑)

あと、何の気になしに地元のローカルテレビを眺めていると「○月○日○時から◇◇でもちまきが行われます」と流れてきたことに驚きました。職場でそのことを話すと、長門市では新築の棟上げの際や、地元のイベントやお祭りの際にもちまきがあると聞きました。そういった文化からインスピレーションを受け、料理に紐づけて提供できればとも思いました。ただ地域の食材を調理するのではなく、その土地の文化を料理で伝えた方が、驚きや感動、愛着が生まれると思うので、そのようなメニュー開発をしていきたいですね。

元乃隅神社
元乃隅神社
千畳敷
千畳敷

新たな地での次なる挑戦は?

自分の働いている旅館だけ良ければ良い!なんて考えは全くありません。料理人同士が集まり、色んな知恵を出し合って料理人のレベルを上げていきたい。それが長門湯本温泉街の発展に繋がると思っています。

現在、新ご当地料理研究会で、長州どり・長州黒かしわを使った新しいご当地メニューを開発する集まりに参加させてもらっています。東京で働いていた時も同様の経験がありますが、新メニュー開発をしても、ルールがなく自由度が高すぎると、お客様へのヒットは難しく、開発した当初は盛り上がっても、定着せず、翌年からは振る舞われなくなり薄れていくという経験をしてきました。自分たちがやってきたことを無駄にしないためにも、きちんと定着するメニュー開発と仕組みを作りたいですね。

今まで出身地である大分県のPRに関して様々なことをしてきました。心から「やりきった!!」と感じています。

この経験を活かして、長門市でもただ料理を作るのではなく、食文化を通して地域を盛り上げていきたいと思っています。仕事がベースで長門市へ移住しているので、仕事のモチベーションを保つことが大事だと感じています。そのためには常に刺激が必要で、料理人同士の繋がりによって地域が盛り上がることこそが自身への刺激になるので、自分自身に刺激を与え続けていきたいと思っています。

日本の「食」「食材」「食文化」の素晴らしさや奥深さ、その魅力に誇りとこだわりを持ち続け、生産者や食品企業と「協働」して地産地消や食文化の普及の取り組みに尽力した料理人を国が顕彰し、更なる取り組みと料理人相互の研鑽を促進することを目的とした『農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」』というものがあるのですが、これを長門市で獲りたいと思っています。最初の5年間で顕彰されれば「ブロンズ賞」さらに5年間で「シルバー賞」、「ゴールド賞」と最終ゴールまで15年かかるので、簡単なことではありませんが、長門市と共に本気で活動し、絶対に獲りたいと思っています!長門湯本温泉街の町おこしももちろんですが、長門市全体の食文化を盛り上げていきたいですね。生産者の方々との交流や、販路拡大会議等に参加できるようになれば、今までの経験を活かしてお手伝いさせていただきたいです。

華麗な包丁さばきで魚を調理する安心院さん

移住を検討している人へのメッセージをお願いします

長門市の食はポテンシャルが高く、美味しいものに溢れていますが、その魅力に地域の人々が気づいていないように感じています。当たり前に感じてしまっているのでしょうか・・・もったいない(笑)これだけのクオリティのものが市場に出ればどれだけの価値があるのかを知ってもらいたいです。そのために、移住者も旅行者も外からどんどんお越しいただき、料理でその価値を伝える、それが僕の使命だと思っています。ぜひ、長門市を訪れて、最高の食を堪能してほしいです!!